1.死産後にしなければいけない事務手続き
死産後にしなければいけない手続きは、死産届の提出と火葬許可証の取得です。火葬等に葬儀社を手配している場合、記入の仕方から提出までサポートしてくれます。
ご自身の手で手続きをしたいというご両親も結構いらっしゃいます。しかし、出生届と死産届を同時に出す必要があったり、役場の事務的な対応であったり、ご家族が傷つく可能性があるので注意が必要です。
1.1.妊娠12周-22週
医学的な死産は妊娠22週以降ですが、妊娠12-22週の流産にも死産届の提出と火葬の義務があります。つまり、この時必須の事務手続きは死産届の提出と火葬許可証の取得です。条件を満たしていれば、出産育児一時金を受け取れます。
死産届はA3サイズで死産証書(死胎検案書*1)と一体になっており、医師・助産師から死産証書(死胎検案書*1)が記入された書類が渡されます。必要事項を記入して7日以内に「届出人*2の現住所」「赤ちゃんが亡くなった場所」を管轄する役所に提出する必要があります。届出人*2(書類に記入する人)には規定がありますが、提出人には規定がありません。死産届を提出しても戸籍には載りません。
死産届は原本が返ってこないので、コピーをとっておくことをおすすめします。
火葬許可証の取得は火葬許可申請書を提出する必要がありますが、自治体によっては不要であったり様式が異なります。原則、死亡届と同時の提出が望ましいです。この時、どこの火葬場を使用するのかを申請しなければいけません。死産の時の火葬場選びはデリケートな問題で「お骨を残せるか」「お骨を拾えるか」などは火葬場によって方針が異なります。そのため、すぐには火葬場を決められないこともしばしばあります(詳しくは後述の火葬場の選び方を参照)。そのような時は、「死産届と火葬許可申請証の受理だけ」ということもできます(市町村により異なる場合があります)。
*1:記入する医師・助産師が分娩に立ち会ってない場合
*2:届出人は提出する人とは異なり、書類を記入する人のことを指します。基本的に父親が望ましいですが、母親・親族でも大丈夫です。
1.2.妊娠22週以降の死産
妊娠22週以降は医学的に死産・早産という扱いになります。基本的なことは妊娠12-22週からのときと同様です。つまり、死産届と提出と火葬の義務があります。誕生後亡くなった場合、出生届を出す必要があるという点が異なります。出生届は死産届と同様に医師から手渡されます。出生の判断は医師の指示に従って下さい。また、妊娠24週を超えると24時間赤ちゃんを安置して置かねばいけません。
死産届のみの提出ですと戸籍には載りませんが、出生届と同時に提出すると戸籍に載ります。
2.火葬場の選び方:お葬式は必要?
火葬をするまでの間、死後の変化を防ぐためにドライアイスや冷蔵庫を用いて安置することになります。それまでに火葬場の選択やその後のことについて選ばなければいけません。考慮するべきは以下の点です。
- 火葬だけ、お葬式(家族葬)するかの決定
- 葬儀社を利用するかどうか
- 収骨が可能かどうか
- お骨が残るかどうか
- 赤ちゃん用の棺や骨壷の手配は可能か
- 棺に入れるものに制限があるか
- お坊さんを呼ぶか否か
- 戒名をつけるか、位牌を作るか
- 納骨するか、分骨するか
2.1.火葬・お葬式について
お葬式はしてもしなくても問題ありません。統計を見ると6ヶ月の死産では6-7割の方が火葬のみですが、8ヶ月あたりから火葬のみの方は1-2割程度と少なくなります。お葬式をされる方は家族葬が殆どです。赤ちゃんの月齢に関係なく、ご両親がお葬式を希望されるなら尊重して、赤ちゃんが一番幸せに思うような供養をしてあげて下さい。
火葬は火葬場を決めるのが重要になってきます。そのとき考慮するべきなのは以下の項目です。
- お骨が残るかどうか
- 収骨が可能かどうか
- 赤ちゃん用の棺や骨壷の手配は可能か
- 棺に入れるものに制限があるか
2.2.赤ちゃんのお骨を残す火葬場の選び方
赤ちゃんとの思い出は少ないため、残せるものは全て残したいものです。実際にお骨や遺灰の回収を希望されるご両親は多いです。しかし、火葬場や地域によっては、時間の都合等でお骨や遺灰の回収を断られる場合があるため、事前の確認が必要です。
また、赤ちゃんの火葬はお骨が残らないもの(残す必要がない)と考えている火葬場やご両親が回収を希望すると思っていない火葬場もあります。実際に、火葬場の設備や赤ちゃんの大きさによってはお骨を残すことが難しいこともあるのですが、火力の弱い火葬場や早朝の時間帯を選ぶことによってお骨を残すことは十分可能です。
2.3.棺と骨壷で注意すること
病院か葬儀会社で用意する(購入する)ことになります。病院でお布団型の箱を用意してくれるところもあれば、葬儀会社に頼むように指示される場合もあります。ゆりかご型やお布団型の棺を用意してくれる葬儀社もありますが、子供用の棺がない葬儀社もあります。その場合、大人サイズの白い棺か単にサイズが小さい棺が使われることが多いです。赤ちゃん用の棺を希望するならば、葬儀社選びの段階で事前に問い合わせておいたほうが無難です。
お骨を回収される場合は、火葬場の火力を調整する必要があります。病院や葬儀屋の棺はこのことが考慮されていますが、ご自身で用意される場合はこの点に注意しなければいけません。
また、棺にはお花、手紙、写真を入れることが多いです。他にはベビーグッズ・お菓子・おもちゃ・絵本などを入れる方が多いですが、入れすぎると火葬場によってはお骨が綺麗に拾えないこともあります。おもちゃなどを入れてお骨も回収したい場合は、事前に相談しましょう。
骨壷についても簡単に触れておきます。骨壷は棺と比べてネットでも多くの商品があり、赤ちゃんらしい優しい色合いのものや小型のものなど種類が充実しています。最近では、葬儀社や仏具店から購入するより、ネットで購入する方が激増しているので一言触れておきます。
ただし、納骨先が決まっている場合、骨壷の大きさなどに指定がある場合が稀にありますので注意が必要です。
2.4火葬場の探し方
「赤ちゃんのお骨を残したい」ならば火葬場選びは大切です。火葬場に個人で問い合わせてもいいのですが、赤ちゃんのお骨を残す必要がないと考えている火葬場の方も多く(特に公営の場合)、まともに取り合ってもらえなかったり、不愉快な言動をされたりする場合も多いです。葬儀社にお願いしたほうが、似たような要望を経験されていることも多いため、良い火葬場を紹介して貰えます。次章で葬儀社(葬儀屋)の選び方について説明しています。
赤ちゃんのお骨を残す必要がない場合はどこの火葬場でも問題ありません。お住まいの市町村の公営の火葬場が安価で済むことが多いです(市内胎児の場合:無料-3万円程度)。
葬儀社を使用するかも自由です。葬儀社を利用するメリットは、事務手続きに精通している、赤ちゃんの安置の際にドライアイスなどの手配が可能(火葬には2-3日かかるケースもあります)、棺・骨壷などの手配などです。デメリットは料金がやや高くなります。死産直後はご両親とも精神的につらい時期です。可能な限り葬儀社を通されることをおすすめします。ご自身で全てされる場合は無理のないようになさって下さい。
3.葬儀社(葬儀屋)の選び方
3.1.病院で紹介される葬儀社には注意が必要
大きい病院では葬儀社が営業をかけ(金品の授受など黒い噂も、公正に毎年クジで決めているところもあるそうですが)、葬儀社員が常駐しています。
そのため、病院で紹介される葬儀社が良心的な葬儀社であるとは限りません。むしろトラブルが多発しているとも言えます。80万円程高額な料金を請求されたり、赤ちゃんを火葬でなく産業廃棄物として処理されそうになったというトラブルがあります(挙げればキリがないです)。
トラブルの主な原因をまとめると以下のようになります。
- 葬儀社が費用をふっかけてくる
- 料金の説明が事前にない
- 追加料金の説明がない
簡単にまとめると遺族が精神的に弱っているところにつけ込んで、高額な請求をすることが主なトラブルです。この背景には、以下の様なことがあります。
- 遺族は相場を知る機会も少なく、考える余裕や選択の余地もないことから、葬儀社の言いなりになってしまう
- 遺族も亡くなった大切な人の前で揉めたくないという心理も働き、泣き寝入りしてしまう
また、葬儀社側が病院へ紹介料を支払っているため(金品にかぎらず霊安室の清掃などの場合も)、直接依頼するのに比べて余計に費用が上乗せされている場合があります。
追加料金については非常にトラブルが多い事例です。例えば、初めに提示されたプランに入ってない料金(ドライアイス代や搬送費等)を不当に高額請求される場合です。また、サービス料など不透明な費用を請求されることもあります。これらは、遺族の精神状態や知識不足などから事前に気付くのは難しいので、非常にトラブルに発展しやすいです。
以上から信頼できる葬儀社にお願いする必要があります。
病院で紹介された葬儀社は断っても問題ありません。葬儀社が決まるまで、赤ちゃんは病院の霊安室で預かってもらいましょう。それが無理で赤ちゃんを自宅に連れ帰る必要がある場合、搬送費を確認して搬送と処置をお願いしましょう。この時点で葬儀社から棺を購入する必要はありません。多くの場合は病院から箱が貰えるはずです。棺は火葬場を決めてからの方が良いです。
もし、病院紹介の葬儀社を断って、病院から不当な扱いを受けた場合は大問題ですので、医療安全支援センターや都道府県の医療対策課などに相談しましょう。
3.2.死産の場合の葬儀社選びで大切なこと
「赤ちゃんのお骨が拾える火葬場を紹介してくれること」が基準になります。火葬場の設備や早朝などの火力の弱い時に火葬するとお骨を残せることが多いです。
先述しましたが、火葬場に個人で問い合わせてもいいのですが、赤ちゃんのお骨を残す必要がない・そもそも残せないと考えている火葬場の方も多く、まともに取り合ってもらえなかったり、不愉快な言動をされたりする場合も多いです。葬儀社にお願いしたほうが、似たような要望を経験されていることも多いため、良い火葬場を紹介して貰えます。
3.3.安くて親切な葬儀社の選び方
一件一件葬儀社を問い合わせても良いのですが、精神的に辛い時に電話対応だけで良心的な葬儀社を見極めるのは非常に困難です。また、「赤ちゃんのお骨を拾いたいという事例」はやや特殊な条件なので対応してくれない葬儀社もあります。葬儀社紹介サイトを介して葬儀社を紹介してもらうほうが、良心的な葬儀社に出会える確率が上がります。
先ほどトラブルに遭われた方も葬儀社紹介サイトを介して葬儀社を見つけられています。葬儀紹介会社は各地域の葬儀社で実際に使用した方の料金・感想を収集しているので、悪質な料金の所や対応が悪い所は紹介されません。
お願いするポイントは以下の2つです。
- 赤ちゃんのお骨を収骨したいので、お骨の残せる設備の火葬場を紹介してくれるか(最大限の努力をしてくれるか)
- 赤ちゃん用の棺や骨壷を手配してもらえるか
葬儀紹介サイトにお願いすると5社程度の葬儀社の見積りを貰えます。
1.良心的な葬儀社の料金を比較できる、2.実際に電話をかけた時の応対を比較できる、ことが大きなメリットです。
中規模の葬儀社が紹介されやすいのが特徴です。今回のような死産の火葬では、大手の葬儀社は料金が高めであり、担当者が変わりやすいのが欠点です(打ち合わせ担当と火葬担当が異なることが多く、手違いがあると大変)。逆に個人経営の葬儀社は小回りが効くかもしれませんが、家族経営で正直しょぼいところが多いです。サポートや対応に不安があります。今回のような「お骨を残すように火葬」をお願いしても、相手にされないことも多いです。
中規模の葬儀社は基本的に同一担当者が始めから最後までサポートしてくれるので、間違いの許されない火葬では重要です。中期の葬儀社は玉石混交という感じです。6-7割の良心的な葬儀社と3割程度の悪質な葬儀社が混じっている状態です。その代わり価格も良心的で、価格とサービスのバランスが非常に良いです。だからこそ、中規模で良心的な葬儀社を探す時は葬儀社紹介サイトを介したほうが安全です。
紹介された葬儀社は料金だけでなく、実際に電話をして応対なども必ず確認しましょう。赤ちゃんの火葬のことや追加料金の有無についても確認しておくと安心です。応対が悪かったらいくら料金が安くても断ったほうが無難です。
3.4.安心できるおすすめの葬儀社紹介サイト
業界最大手の葬儀レビがおすすめです(というかそれ以外に選択肢はありませんが)。
- 全国対応で業界最大級
- 24時間365日対応:メールのレスポンスも速い
- 過去の利用者アンケートを参考に評判の良い「優良葬儀社」を厳選
- 紹介された葬儀社についてアンケートに答えると最大2万円の弔慰金が受け取れる
メリットは簡単に挙げると上記のような点です。やはり、業界最大級であることが、最大の特徴でメリットです。過去の案件の蓄積があるので、葬儀レビは今回のような「赤ちゃんのお骨を残したい」という要望にも応えてきています。葬儀紹介サイトでは葬儀レビ一択という状態です。
4.火葬後に必要なこと:ご位牌や納骨について
4.1.納骨について
納骨についての時期に決まりはありません。また、必ず納骨する必要もありませんし、どこに納骨するのも自由です。お骨は数少ないお子さんの証ですので、手元で供養される方が殆どです。
ただし、納骨先が決まっている場合、納骨先によってはお坊さんが火葬に立ち会わないと納骨を認めなかったり、骨壷の大きさに指定がある場合があります。事前に確認されることをオススメします。
また、納骨する場合も分骨(少量のお骨を手元に残す)して遺骨ペンダントに納めて肌身離さず所持したり、5年経ってから納骨するなどご家族によって様々です。
両親や祖父母にすぐに納骨するように言われたり、分骨を禁じられ、トラブルに発展することが多々あります。いずれの行為も宗教的にも問題はありません。そのようなトラブルの時に、このホームページが助けになれば幸いです。ご両親が一番望むことをしてあげることが、何よりの供養となります。
4.2.戒名を付ける必要はある?
日本の仏教において、私達はこの世の穢れを落とすことで極楽浄土に行くことができると考えられています。そのために、仏様が説く「戒」を聴き、この道に入るための名前を「戒名」と呼びます。この世に生まれた赤ちゃんは純真無垢で穢れを知りません。ですから、戒名をつけなくても極楽へ旅立つことができます。ですから、宗派・地域によって解釈は異なりますが戒名を付ける必要は必ずしもありません。
ただし、戒名を付けるのも一つの供養の形です。ご両親が赤ちゃんにとって一番いいと思われる方法で供養してあげて下さい。
(追記)最近は戒名を付ける方が増えているようです。お母さんのお腹の中で、確かに人として育ったのですから…
戒名を付けて貰うには、1.納骨先のお寺(ないしは菩提寺)に依頼する、2.火葬の時にお坊さんに依頼する、が主な方法です。
菩提寺や納骨先のお寺に依頼する場合のお布施の相場はランクに依りますが、15-50万円程度が多いようです。葬儀社のお坊さんの場合もお布施は同じぐらいです。葬儀社の担当者の方に聞いてみるといいでしょう。これは戒名代だけなので、読経をお願いしている場合はさらにお布施の額を増やす必要があります。
分かりやすい料金で戒名を貰うならば、お坊さん便を使うことをおすすめします。料金は明確で戒名だけの場合2万円、読経を追加するなら3.5万円追加と相場の10分の1程度です。
- お車代や心づけなどの気遣いが不要
- 不透明だったお布施の金額が、事前に決まっているので料金が明瞭
- 個人情報がしっかり守られる
- 檀家になる必要がない
このようなメリットがあります。
(追記)
本寿院(公式サイト:http://111.or.jp/kaimyou/)の住職さんが一律3万円で戒名を付けるサイトを運営されています。お坊さん便よりこちらの方が良いと思います。お金で貰える戒名が変わる現状に疑問を抱き、非営利目的で運営されているサイトですので料金も後払いです。NHKでも紹介されているので、とても信頼できるサイトです。戒名について相談される場合は赤ちゃんへの想い、赤ちゃんへ決めていたお名前やどのような子に育って欲しかったか、などをメールでまとめてから申し込まれると良いでしょう。いきなり電話をかけると上手く言葉にまとめられないので、赤ちゃんへの想いを戒名にきちんと反映させることが難しくなります。
4.3.位牌を作る必要はある?
位牌も戒名と同様に必ず作る必要はありません。ただし、位牌を作り安置しておくことで、精神が落ち着くという場合も多々あります。その場合は、迷わず作ることをおすすめします。位牌には戒名がない場合、「[家名]家水子の諸精霊」「[家名]水子」と記すのが一般的です。戒名も位牌もご両親が赤ちゃんにしてあげたい供養をするのが一番の供養になります。
位牌の相場は2-3万円程度です。あまりに値段の安いものだと位牌の木が歪んでいたり、変形したりと品質面でのトラブルが多いです。
また、位牌を作成した後、開眼法要を行う必要があります。これは、位牌に魂を入れる所作です。位牌を祀り、一心に祈れば自然に開眼されるものですが、一般にはお坊さんに依頼するのが普通です。一般的な場合開眼供養料2-3万円、お布施5-10万円(、お車代1万円)程度が相場です。お坊さん便を使うならばまとめて定額の3.5万円です。
4.4.水子供養という供養の仕方
お葬式や菩提寺で供養された方は必要ありませんが、それでも供養し足りないという方が水子供養されることはあります。何回も供養することは赤ちゃんにとっても大切に想われている証で、霊が迷うようなことはありません。
一般には、火葬だけ済ませたが、きちんと供養してあげたい、心のけじめをつけたいなどの理由で、水子供養される方は多いです。水子供養も一つの供養のかたちです。
コメント
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